積ん読崩しの日々

ミステリ・SF・ホラーを中心に

買った本

★本を買った。

田中啓文『異形家の食卓』(集英社文庫)

古泉迦十『崑崙奴』(星海社FICTIONS)

玖月晞『少年の君』(新潮文庫)

イム・ソヌ『光っていません』(東京創元社)

E・T・A・ホフマン『牡猫ムルの人生観』(東京創元社)

ダヴィド・ラーゲルクランツ『記憶の虜囚』(KADOKAWA)

 『異形家の食卓』は正確には新刊ではなく復刊。長らく入手困難だったものが、読者によるSNS投稿がきっかけで復刊が実現した。素晴らしいことである。『牡猫ムルの人生観』は先に光文社古典新訳文庫から出ているが、酒寄さんの訳が好きなのと装丁が良かったのでこちらを選んだ。ただしこちらの方が少し値は張る。

『アンソロジー 料理をつくる人』(創元文芸文庫)

収録作品

西條奈加「向日葵の少女」

千早茜「白い食卓」

深緑野分「メインディッシュを悪魔に」

秋永真琴「冷蔵庫で待ってる」

織守きょうや「対岸の恋」

越谷オサム「夏のキッチン」

 

 料理そのものではなく料理を作る人をテーマにしたアンソロジー東京創元社では紙魚の手帖の特集をアンソロジーという形で刊行する場合があるのだが、今回「料理をつくる人」特集が文庫となって刊行された。これはとても楽しみにしていた本で、というのも、書評家の杉江松恋氏のYou tube番組「短いのが好き」のコーナーで、本書に収められている「夏のキッチン」が紹介されていて、これがとても面白そうだったのだ。実際読んでみると、粒ぞろいですべて面白かった。以下、特に印象に残った作品。

 「向日葵の少女」は〈お蔦さんの神楽坂日記〉シリーズの一篇。実はこのシリーズ、『無花果の実のなるころに』を10年以上前に読んでおり、正直その時はあまり印象に残っていなかった。だが今回久しぶりに読んでみると、ほっこりするキャラクターたちと、望が作るおいしそうな料理の描写が素晴らしいミステリとして楽しめた。調べると『無花果~』以降3作品が刊行されている人気シリーズとなっているようだ。こういう日常の謎がテーマのミステリは、社会人になってから心の癒しとして手に取る頻度が高くなっているので、このシリーズは再び読んでみようかなと思った。

 「メインディッシュを悪魔に」は、ニューヨークのマンハッタン島でレストランを営むジュリエットというシェフが主人公。ある日突然サタンの前に連れていかれ、「退屈しのぎに自分が満足する料理を作れ。合格しなければひどい目に遭わせる」と言われる。設定が面白いだけでなく、最後は結構心に沁みる良いストーリーだった。

 「夏のキッチン」は、ある夏の午後、小学6年生の男の子がおなかがすいてしまったためにカレーを作ろうとするお話。しかしこの家では子供だけで包丁を使ってはいけないというルールがあり、どうやって材料を切るのかといった子供ならではの考え方や、初めて料理を作るときのワクワク感やドキドキ感がほほえましく面白い。ここまでが前半で、後半になると前半に仕掛けられていた伏線が回収され、ちょっとした驚きもあってとても素晴らしい家族小説だった。越谷さんの作品もだいぶ久しぶりに読んだが、いずれまた読んでおきたい。

 

★本を買った。

横田創『埋葬』(中公文庫)

ジェローム・ルブリ『魔王の島』(文春文庫)

 先月ルブリの新刊が翻訳され、ネタバレ厳禁の前作を早く片付けなければと思い『魔王の島』をようやく読了。刊行当時、面白かった!と絶賛する人もいれば、ミステリとして破綻しており、これをミステリというのは許せん!的な意見も見られたので相当気になっていた。

 

 冒頭は2019年、とある大学教授が80年代に起きた〈サンドリーヌの避難所事件〉について語ろうとしている。ただしこの事件はどの媒体にも記録されていないためネットで検索しても一切出てこないという。

 サンドリーヌという若手の記者は一度も会ったことのない祖母の訃報を受け、遺品整理のため祖母が暮らしていた孤島へと渡る。その島では終戦直後、戦争で心に傷を負った子供たちのためのキャンプ施設があり、祖母を含む数少ない島の住人たちはそのキャンプの職員として働いていた。サンドリーヌがその島へ渡りしばらくすると島の住人の一人が謎の死を遂げてしまう。

 

 これ以上の内容紹介はネタバレになる可能性があるので触れられない。かなり否定的な意見を見ていたのでハードルは低めにしていたが、意外と楽しめた。ミステリとしては確かにアンフェアで、怒る人がいても「まぁ、そうだよな」と納得できる。第一の道しるべ、第二の道しるべ……と読み進める度にとあるネタが繰り返され、驚愕させられると同時に困惑もする。ロジカルな本格ミステリを求める人のほとんどは本書を受け入れられないのではないだろうか。しかし個人的には面白かったし、意外と幻想小説が好きな人にはおススメかもしれない。

 

★本を買った。

『ここにひとつの□がある』(角川ホラー文庫)

小栗虫太郎『女人果』(春陽文庫)

夢野久作『暗黒公使(ダーク・ミニスター)』(春陽文庫)

『ハヤカワミステリマガジン 2025年1月号』

 今月のミスマガはランキング発表号である。ランキングを見るのは楽しいが、それはそれとして読み切り翻訳短篇が華文ミステリの一篇のみとは何と寂しいことか……。

買った本

★本を買った。

ジャニス・ハレット『アルパートンの天使たち』(集英社文庫)

ミッティ・シュローフ=シャー『テンプルヒルの作家探偵』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

D・M・ディヴァインロイストン事件』(創元推理文庫)

久住四季『神様の次くらいに 人の死なない謎解きミステリ集』(創元推理文庫)

『アンソロジー 料理をつくる人』(創元文芸文庫)

 

 入手困難だった『ロイストン事件』が創元推理文庫で復刊し、さらに来年には『こわされた少年』も復刊されるという。これでディヴァインの全作品が創元推理文庫で読めることになる。実にめでたい。

 『神様の次くらいに 人の死なない謎解きミステリ集』『アンソロジー 料理をつくる人』は刊行を楽しみにしていた2冊。

歌田年『BARゴーストの地縛霊探偵』(宝島社文庫)

収録作品

「BOOZE 01:詐欺」

「BOOZE 02:人間消失」

「BOOZE 03:定義」

「BOOZE 04:君の名は」

「BOOZE 05:アリバイ」

「BOOZE 06:ダイイングメッセージ」

「LAST BOOZE」

 

 レギュラーキャラクターたちとほかの客の会話が推理合戦となってゆく構成が『黒後家蜘蛛の会』を彷彿とさせるが、こちらの探偵役は給仕ではなくバーの地縛霊である老人。二話目から幽霊となり、店内で眠ってしまった人間に憑依しなければ推理が披露できないという設定も面白い。各話に人間消失や暗号などの仕掛けがあり、ミステリとして楽しめる上、個人的に『黒後家蜘蛛の会』形式のミステリが大好物ということもあってレギュラーキャラクター達の店内での会話を読んでいるだけで癒された。

 また、本書には全体を通してある仕掛けが施されているのだが、そこは慣れている読者であれば早い段階で気づくかもしれない。私は四話目あたりまで気づかなかった。

 最後までほのぼのとして大変良かった。こういう作品は常に何冊かストックしておきたい。

 

浅倉秋成『まず良識をみじん切りにします』(光文社)

収録作品

「そうだ、デスゲームを作ろう」

「行列のできるクロワッサン」

「花嫁がもどらない」

「ファーストが裏切った」

「完全なる命名

 

 表紙デザインとタイトルに惹かれて読み始めたところ、一話目から今まで読んだことのない魅力があり一気にハマり込んだ。どれも奇妙な設定で「世にも奇妙な物語」で採用されそうな話であった。

「そうだ、デスゲームを作ろう」:取引先の発注担当者から理不尽な扱いを受け続けた主人公が、デスゲームによって相手を殺すことを決める。この話の特徴はデスゲームの様子ではなく、デスゲームを行うための準備を描いたところにある。デスゲームの舞台にふさわしい場所や舞台を作り上げるための交通手段、材料の調達、それらにかかる費用などを事細かに描かれていて面白い。

「行列のできるクロワッサン」:知らぬ間に開店したクロワッサン専門店にできた行列が日を追うごとに長くなり、はじめは気にしていなかった主人公だが、この行列によって人生が翻弄される話。日本人の性質をネガティブな方向に誇張した展開、結末が恐ろしい。

「花嫁がもどらない」:結婚式の二次会で突然「気持ち悪い」と言い残した花嫁が部屋に閉じこもってしまい、招待客たちが何が気持ち悪かったのかを議論する話。他人に向けられる無意識な悪意が肥大化して、イヤ~な展開が味わえる。

「ファーストが裏切った」:ファーストの守備に就いていた選手が試合中、突然裏切り行為を続けるようになった話。読後、その気持ちわからないでもないという気持になった。ああいった衝動を○○が割れたと表現したのが巧いと思った。

「完全なる命名」:本書の中で一番好きで一番笑った話。まもなく産まれてくる子どもの名前についてひたすら悩み続ける話。主人公には妄想癖があり、いつの間にか妄想の世界に入り込んでいくのだが、それがどれもバッドエンドを迎えるのが恐ろしいのだが、読んでいる方としてはどうにも笑ってしまう。オチも笑った。

 

★本が届いた

寝舟はやせ『入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください』(KADOKAWA)

ヘレン・ライリー『欲得ずくの殺人』(論創海外ミステリ)

 近年、国内ホラー小説の充実度には目を瞠るものがある。

最近買った本

読書は遅々として進まないが、本は大量に買っていた。

★新刊(落穂拾いも含む)は以下を買った。

浅倉秋成『まず良識をみじん切りにします』(光文社)

円城塔『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』(文藝春秋)

有栖川有栖『捜査線上の夕映え』(文春文庫)

米澤穂信『米澤屋書店』(文春文庫)

井上雅彦『宵闇色の水瓶 怪奇幻想短編集』(新紀元社)

斜線堂有紀『さよならに取られた傷だらけ 不純文学』(河出文庫)

木山捷平『駄目も目である 木山捷平小説集』(ちくま文庫)

生島治郎『悪意のきれっぱし 増補版』(ちくま文庫)

中島京子『オリーブの実るころ』(講談社文庫)

耶止説夫『耶止説夫作品集 八切止夫の国際探偵小説』(せらび書房)

どくさいスイッチ企画『殺す時間を殺すための時間』(KADOKAWA)

鮎川哲也『占魚亭夜話 鮎川哲也短編クロニクル1966~1969』(光文社文庫)

小田雅久仁『残月記』(双葉文庫)

成田名璃子『時帰りの神様』(双葉文庫)

歌田年『BARゴーストの地縛霊探偵』(宝島社文庫)

矢樹純『撮ってはいけない家』(講談社)

一穂ミチ『うたかたモザイク』(講談社文庫)

有栖川有栖に捧げる七つの謎』(文春文庫)

ジェイク・ラマー『ヴァイパーズ・ドリーム』(扶桑社ミステリー)

ジェローム・ルブリ『魔女の檻』(文春文庫)

アンドリュー・クラヴァン『聖夜の嘘』(ハヤカワ・ミステリ)

ジル・ペイトン・ウォルシュ『貧乏カレッジの困った遺産』(創元推理文庫)

サマンサ・シュウェブリン『救出の距離』(国書刊行会)

ロドルフ・テプフェールジュネーヴ短編集』(ルリユール叢書)

リチャード・オースティン・フリーマン『ヘレン・ヴァードンの告白』(風詠社)

 

★古本では以下を買った。

遠藤徹『姉飼』(角川ホラー文庫)

藤崎翔『おしい刑事』(ポプラ文庫)

松尾由美『ハートブレイク・レストランふたたび』(光文社文庫)

天祢涼『境内ではお静かに 七夕祭りの事件帖』(光文社文庫)

田丸雅智『夢巻』(双葉文庫)

小島正樹『怨み籠の密室』(双葉文庫)

近藤史恵『ホテル・ピーベリー(双葉文庫)

恩田陸『いのちのパレード』(実業之日本社文庫)

杉浦日向子『一日江戸人』(新潮文庫)

『吾輩も猫である』(新潮文庫)

津原泰水『歌うエスカルゴ』(ハルキ文庫)

太田忠司名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは引っ張りだこ』(ハルキ文庫)

渡辺優『自由なサメと人間たちの夢』(集英社文庫)

久坂部羊『怖い患者』(集英社文庫)

 

★ノンフィクション系の本も買った。

廣田龍平『ネット怪談の民俗学(ハヤカワ新書)

井波律子『中国ミステリー探訪』(潮文庫)

みっけ『知りたいこと図鑑』(KADOKAWA)

ティム・ジェイムズ『世界の見方が変わる元素の話』(草思社)

 

★先日購入した『夢をまねく手 他二十一篇』が再び盛林堂書房より届き、おや?と思ったら全冊に乱丁があったようで、これはその修正版だそうだ。