積ん読崩しの日々

ミステリ・SF・ホラーを中心に

歌田年『BARゴーストの地縛霊探偵』(宝島社文庫)

収録作品

「BOOZE 01:詐欺」

「BOOZE 02:人間消失」

「BOOZE 03:定義」

「BOOZE 04:君の名は」

「BOOZE 05:アリバイ」

「BOOZE 06:ダイイングメッセージ」

「LAST BOOZE」

 

 レギュラーキャラクターたちとほかの客の会話が推理合戦となってゆく構成が『黒後家蜘蛛の会』を彷彿とさせるが、こちらの探偵役は給仕ではなくバーの地縛霊である老人。二話目から幽霊となり、店内で眠ってしまった人間に憑依しなければ推理が披露できないという設定も面白い。各話に人間消失や暗号などの仕掛けがあり、ミステリとして楽しめる上、個人的に『黒後家蜘蛛の会』形式のミステリが大好物ということもあってレギュラーキャラクター達の店内での会話を読んでいるだけで癒された。

 また、本書には全体を通してある仕掛けが施されているのだが、そこは慣れている読者であれば早い段階で気づくかもしれない。私は四話目あたりまで気づかなかった。

 最後までほのぼのとして大変良かった。こういう作品は常に何冊かストックしておきたい。