積ん読崩しの日々

ミステリ・SF・ホラーを中心に

サミュエル・アウグスト・ドゥーセ『スミルノ博士の日記』(中公文庫)

 ドゥーセの『スミルノ博士の日記』を読了。かつて『世界推理小説大系』(東都書房)の第5巻として出たものを復刊、文庫化したものであるが、単なる復刊ではなく、当時の翻訳の底本として使われたドイツ語版と原書のスウェーデン語版を比較し、原書から省略された部分や変更点などが巻末で補われている。こういった丁寧な仕事がなされた上で読めることは大変に幸せなことである。中公文庫の編集者の方々に感謝申し上げます。

 女優アスタ・ドゥール殺害事件に遭遇した法医学者スミルノ博士の手記によってストーリーが展開してゆくミステリーである。本書はあのネタの古典的作品とか、ミステリー界隈では有名であるが、その事前知識が頭にあっても十分楽しめる一冊であった。如何にしてそれを実現したか、探偵は何を根拠に犯人を指摘したか、物語の結末は?読みどころはいくらでもあるのだ。

 

★奇しくもスウェーデン産ミステリーを新旧続けて読んだ。こちらは本格謎解きミステリー、あちらはサイコスリラー+警察小説。どちらも面白かった。そうそう、大事にとっている『ウナギの罠』もまだ控えている。こちらも楽しみだ。