黒木あるじ『春のたましい 神祓いの記』を読了。世界で大流行している感染症により、祭りや神事が行われなくなったことで、自我を失い暴走する神々に対するため、公的機関「祭祀保安協会」の九重十一が各地方を巡る、という連作短篇集。
収録作品
「まつりのあと」
「春と殺し屋と七不思議」
「いざない」
「われはうみのこ」
「おやくめ」
「あそべやあそべ、ゆきわらし」
「おくやみ」
「わたしはふしだら」
「まよいご」
「春のたましい」
ホラー小説らしく神の怒りが人々に実害をもたらす恐怖として描かれる一方で、人と神との間にある愛情や絆によって互いに不可欠な存在として寄り添うものでもあるというストーリー展開となるため、後味は非常に良い。こういうタイプの話は好みドンピシャなのでもっと読みたい。
全身黒ずくめの九重十一とその部下でホスト風の派手な見た目と軽薄そうな性格の八多岬という怪しさ満点のメインのキャラクターも良い。途中で敵対する組織の人物も出てきたりして、その全貌はまだ明らかとなっていないので、シリーズ化するのかもしれない。もしそうであれば追いかけるしかあるまい。面白かった。