とある住宅地に、刑務所を脱走した女性受刑者が向かってきているというニュースが入ってくる。住宅地の路地をはさんだ10軒の家の住人たちは交代で見張りをすることに。
以前から気になっていた作家で、ようやく読むことができ一先ず満足。芥川賞作家ということもあり読みにくさを危惧していたが、その心配は杞憂に終わり面白く読めた。いつもなら挨拶をする程度の関係でしかなかった近所の住人たちが、夜警という非日常イベント(?)によって交流することで、知らず知らずのうちに互いに影響を与え、家族や個人の抱える悩みや辛さがそっと解けてゆく。三橋家夫婦が悩んでいた問題のある息子の博喜が友達と出かける最後のシーンは青春を感じる爽やかさが良かったし、会社での苛立ちから誘拐を企んでいた望が、笠原家の老夫婦や壮年の松山さんと交流することで荒れた気持ちが癒えてゆくところも清々しくて良かった。